ベトナム送り出し機関で働く日本人のブログ

ベトナム生活で日々感じたことを不定期更新します。ベトナム人材(技能実習生、技術・人文知識・国際業務、特定技能、インターンシップ)についてのご相談を承ります。

【特定技能】ベトナム送り出し機関の役割について

2019年7月1日、在留資格「特定技能」について日越協力覚書が交わされました。


ベトナム人の特定技能人材を適正に扱うため、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)は次の約束をしています。


①送出機関は、審査、許可制にする。
②ベトナムの関連法令に違反する不適正な行為をした受入機関に、送出機関が特定技能人材を送り出すことを許可しない。


→本日時点(2019/8/16)で、許可された送り出し機関はありません。


ベトナムに住んでいる、特定技能での就労を希望する人材は、送り出し機関を通して書類手続きを行う必要があります。


送り出し機関とは、海外労働派遣のライセンスを取得している業者のことです。これまで技能実習生を扱う業者が取得してきた許可ですが、今後は特定技能にも適応されることが決まりました。



特定技能における送り出し機関の役割

技能実習と違うところに注目して進めたいと思います。特定技能における送り出し機関の役割は、以下5つです。


①人材募集
②日本語教育
③技能試験  試験対策
④在留資格  申請書類
⑤フォローアップ


1.人材募集

・14業種の中で、募集の簡単な業種と集まりにくい業種が出てきます。介護は、「介護技能評価試験」「JLPT N4またはJFT-Basic」に加えて「介護日本語評価試験」にも合格する必要があるなど、技能実習生の介護同様にハードルが高くなりそうです。


・技能実習では、ベトナムの勤め先と同職種の技能実習である必要がありました。現職の経験が活かせる職場で学び、技術を向上させることで、本国に戻ったあと、同職種において母国に貢献できる人材を育てることが狙いです。一方で特定技能は、人材の職歴要件がないため、職歴のない新卒の学生を採用することが可能です。


・試験対策の不要な元実習生が人気になりそうです。元実習生の青田買いが進んでいます。前金を入金させることで、他社へ移動できないようにする動きが見られます。


2.日本語教育

・実習生は、介護職種(JLPT N4以上取得)以外、日本語レベルについて明確な要件がありませんでした。特定技能では、14業種すべてに日本語要件が定められています。


・元実習生以外は、「日本語能力試験(JLPT)」N4 または、国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)」に合格する必要があります。


JFT-Basicは、特定技能により新たに作られた日本語試験で、国外9カ国で実施・予定です。先ずは、日本語要件を満たすことが優先されると思うので、JFT-Basicに照準を合わせて、採用計画を立てられるのがオススメです。4月5月フィリピンで実施された結果では、合格率50%以上でした。


詳しくは、コチラから
【特定技能】「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」について - ベトナム送り出し機関で働く日本人のブログ



・元実習生などで、帰国後日本語を使わなかった、忘れてしまった人に対して、各送り出し機関独自の復習コースが用意されると思います。


3.技能試験 試験対策

・特定技能で認められている14業種全てに技能試験が用意されます。既に問題サンプルが公表されている介護、外食の内容を見ると、勉強しなければ合格は難しい内容になっています。


・宿泊業では筆記試験、実技試験を予定している業種もあります。実技試験は質問形式で行われ、ホテルのスタッフになったつもりで、接客などの様々な質問に答えなければなりません。試験対策は必須です。


4.在留資格 申請書類

日本語や技能試験に合格する必要のある試験組の人材は、在留資格の申請書類の中に各試験の合格通知が必要になります。


5.フォローアップ

技能実習の場合、実習生一人あたり5,000円/月~の管理費をいただくことで、送り出し機関は駐在員を配置したり、定期的に受入機関に巡回するなどサポートをします。


特定技能に、管理費はありません。つまり原則は、来日した人材は送り出し機関の手を離れることになります。


そうは言っても、送り出し機関のサポートが必要になる時もあると思います。例えば、就業して1年も経てばベトナムに一時帰国したいと言ってくるかもしれません。一時帰国の理由は決まっていて、家族の病気、身内や本人の結婚、旧正月(テト)、離婚争議などです。送り出し機関が家族に連絡するなどし、事実確認を手伝うことも出てくるのではと考えています。



まとめ

技能実習と特定技能では、送り出し機関の役割に違いがあることが分かりました。いずれにしても、協働する送り出し機関が担うパートはとても重要です。


信頼できるパートナーと手を組む必要があるのは言うまでもありません。そこで、別の機会に送り出し機関を選ぶ上での留意点について記事にしたいと思います。



以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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【特定技能】「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」について

特定技能の人材要件は、大きく2つのパターンがあります。

・元実習生 (同業種への移行であれば試験免除)


または、
・「技能評価試験」に合格
・「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」又は「日本語能力試験(JLPT)」N4級に合格


特定技能の介護については、これに加えて「介護日本語評価試験」に合格しなければなりません。


この記事では、「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」について調べたことをまとめてみました。


「日本語能力試験(JLPT)」については、こちらをご覧ください。




「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」について


外国人労働者の受け入れ拡大=特定技能のための、新たな日本語能力テストです。名称のとおり、国際交流基金が試験をつくり、2019年4月フィリピンにて第1、2回目が実施されました。日本語を母語としない外国人を対象に、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するものとなっています。



実施主体の独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)とは・・・

外務省が所管する独立行政法人の一つで、世界24か国・29の拠点を持っています。運転資金の多くは、国からの補助金として約150億(2017年度)で賄われていますが、次点で「日本語能力試験受験料等収益」が約11億円(2017年度)となっています。



「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」とは

ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に沿い、日本語習熟度を6レベル(A1、A2、B1、B2、C1、C2)に分けた中の、A2レベルを指しています。


C2が最もレベルが高く、A1は基礎段階の言語使用者とされています。


[A2レベルの目安]:
・自分の身近にある家族、仕事、買い物などに関して、簡単な言葉で表現や理解ができます。
・日常で起きたこと、簡単なことであれば情報交換できます。



テスト実施場所と日程は?

先行して始まったフィリピンでは、4月2回、5月3回、6月5回とほぼ毎月複数回を実施しています。直近では8月5日に実施されました。これは、漏れなく受験希望者がテストを受けられるための配慮だと思いますし、採用企業としても、在留資格の申請や受入体制の準備がしやすくなる点で有難いことと思います。


国際交流基金の試験実施要領には、2019 年度は、実施回数は一年度あたり5 回、実施時期は概ね4 月、6 月、10 月、1 月、3 月とすると書かれています。



➀フィリピン 
次回は、アテネオ・デ・マニラ大学内にて、9月14日予定されています。10月以降は、マニラ、セブ、ダバオの3都市開催で、各地で複数回開催されます。


②モンゴル(ウランバートル)
11月9日、10日、16日、17日


③カンボジア(プノンペン)
10月27日~30日


④ミャンマー(ヤンゴン)
10月30日~11月2日、11月6日~9日、11月14日~16日


⑤ネパール(カトマンズ)
10月27日~29日、11月5日~7日、11月12日~14日


*インドネシア、タイ、中国、ベトナムについては、試験実施環境が整った国から試験を行う予定とされています。また来日前に、能力を判断するものとして、現在日本での開催予定はありません。



テストの実施方法は?

[実施時間]:60分
[問題数]:60問程度


コンピュータ・ベースト・テスティング(CBT)方式といわれる形式を採用しています。テスト会場にコンピュータが用意され、画面に表示される問題やヘッドフォンに流れる音声をもとに、画面上で解答します。


CBT方式について | BJTビジネス日本語能力テストとは | BJTビジネス日本語能力テスト


試験内容と合格基準、結果発表について

[試験科目]:4つのカテゴリーに分かれます。
➀文字と語彙:生活に必要な場面や話題で使用される日本語の文字が読めるか、基本的な語彙を持ち、使えるかを測る。
②会話と表現:生活の具体的な場面の会話に必要な文法や表現を使えるかを測る。
③聴解:生活場面において、会話や指示などを聞いて、理解できるかを測る。
④読解:生活場面において、手紙や掲示、説明などを読んで、理解できるかを測る。



[合格基準]:総合得点は、250 点満点で、判定基準点(200点)以上で合格です。判定基準以上であれば「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力水準に達している」と判定されます。



[結果発表]:テスト終了時の画面に、判定結果が表示されます。またテストの2週間~1ヶ月以内に、申込み専用ウェブサイトへログインすることで正式な判定結果通知書をダウンロードできます。


JLPTの合否は、ウェブで2か月ほど待たなければなりませんでした。これまでは、忘れたころに合否が分かるといった感じだったので、非常に有り難いです。不合格だった受験生にとっては、直ぐに再チャレンジの準備に取り掛かれますし、合格した受験生は、在留資格の申請が開始できたり、これから面接する人には、面接の合否にも大きく影響が出ると思います。



その他、受験費用など(フィリピン参照)

[申し込み方法]:原則として専用ウェブサイトから。フィリピンの9月予約については、実施地のテスト会場であらかじめバウチャー券を購入する必要があります。


[受験料]:1,500ペソ(約3,000円)


[試験当日]:身分証明書(パスポート、運転免許証、SSS IDなど)を持参、提示する。提示しない場合、テストを受けることはできません。



テスト結果

受験者数計 327名
基準点到達者数(合格者)計 129名
合格率(平均) 36.3%


フィリピンの結果を見てみると、受験者数は増えてますが、一方基準点到達率(合格率)は低くなっています。JLPTのここ数年間のN4合格率は30%台が続いているので、JFT-Basicも30%台に落ち着くのでしょうか。


日本語能力試験(JLPT)との比較

特定技能で来日を考える場合は、JFT-Basicの方が圧倒的に使い勝手が良さそうですね。


特定技能は他の在留資格と同様に、入国後は基本的に日本語能力を問われませんが、雇用先で5年間継続して雇用してもらうため、充実した日本での生活を送るため、将来の選択肢を広げるためにも、JLPTでN3以上の合格を目指していただきたいと思います。



まとめ


今回は、特定技能の開始に合わせて作られた「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」について調べてみました。


開催国からも読み取れるように、特定技能に特化した試験ということがよく分かりました。今後は、JFT-Basicに合格するための対策コース、テキスト、教授方法などが増えていくのではないかと予想されます。


気になっていたこととして、JLPTと同様に、直接会話力を測る試験は実装されていませんでした。試験対策が中心になり、会話力が身についていない状態で来日してしまうと、雇用先でコミュニケーションに起因したトラブルが起きることもあるでしょう。それ故、入国前の教育はとても大切になりますし、雇用側も制度や外国人が学ぶ日本語に対する理解、やさしい日本語を勉強するなどの心構えも大切ではないでしょうか。



以上、最後までお読みいただきありがとうございました。



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「日本語能力試験(JLPT)」について

日本語の試験といえば、先ず日本語能力試験(JLPT)を思い浮かべる人が多いと思います。この記事では、特定技能の要件にもなっているJLPTについてと、主催の国際交流基金のことも少し調べてまとめました。

JLPTとは?

日本語能力試験(JLPT)は、JAPANESE LANGUAGE PROFICIENCY TESTの略称です。


日本語能力試験は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験として、国際交流基金と日本国際教育協会(現日本国際教育支援協会)が1984 年に開始しました。開始当初の受験者数は全世界で7,000人ほどでしたが、2011年の受験者数は全世界で約61万人にのぼり、世界最大規模の日本語の試験となっています。

目的と沿革 | 日本語能力試験 JLPT


35年前からあるんですね!世界中の人たちが日本語を勉強してくれているのは、日本人としてはとても嬉しいです。



試験内容は?

[試験科目]:言語知識(文字・語彙・文法)・読解、聴解が出題されます。解答方法はマークシート方式です。基本4つの選択肢ですが、聴解は3つの問題もあります。


そのため、JLPTは「書く」「話す」のスキルを測るものではありません。


[レベル]:N1、N2、N3、N4、N5の5つのレベルがあります。N1は、非常に難しく、高い日本語能力を証明するに相応しいものとなっています。


中国や台湾などの漢字圏の人たちに、とても有利な試験とされています。一方、非漢字圏のベトナム人は、漢字に一苦労するため、N1取得者ともなれば極端に少なくなります。また会話力は、N2のベトナム人であれば、N1中国人より上手と言われることがあります。



JLPTのサイトには、N1~5までの問題例に挑戦できるようになっているので挑戦してみてください!




試験・合否日程

[試験日]:1年に2回、7月上旬と12月上旬に実施されます。


第1回 2019年7月7日(日)
第2回 2019年12月1日(日)


第1回試験 実施都市
日本:47都道府県(2019年予定)
海外:40の国・地域、135都市(2018年実績)


第2回試験 実施都市
日本:47都道府県(2019年予定)
海外:76の国・地域、232都市(2018年実績)


[合否の結果]:は、2か月後、JLPTのサイトから確認ができます。


合格に要する期間の目安

全く日本語を勉強したことがない人は、当然ひらがな、カタカナ、数字の読み方など一から勉強する必要があり、想像に難くない努力が必要です。



ベトナム実習生が送り出し機関の日本語センターで勉強する場合、平日8時間+土曜半日+自習2時間ほどを4~6ヶ月ほど続けます。この間、日本の生活(ごみ捨て、交通など)やレクリエーションなど、1-2月にはテト休みを挟みます。1クラス15名ほどを想定した場合は、下記程度の期間が必要です。


N5合格まで・・・3ヶ月
N4合格まで・・・8ヶ月
N3合格まで・・・1年半


優秀な学生であれば、半年ほどでN4に到達します。エンジニアであれば、N4まで6ヵ月、N3まで1年を見込めます。



日本語能力試験のメリット

[就職]:ベトナムでは、N3持っていれば仕事に困らない状態です。特に日本語教師の需要が多くあります。N2取得者であれば、日本語を必要とする仕事に引っ張りだこで、日系企業の就職や通訳の仕事を得ることができます。N1取得者ともなればは、尊敬を以って厚遇を受けることができます。


[待遇]:本人の経験などにもよりますが、日本語ができる、できないで待遇は大きくことなります。

  • N3 3~6万円/月
  • N2 6~15万円/月
  • N1 10万円~/月 


[在留資格]:日本語能力試験の認定には、学校での単位・卒業資格認定や、企業での優遇、社会的な資格認定、在留資格の取得要件にもなっているなど、さまざまなメリットがあります。


・日本の医師等の国家試験を受験するためには、N1が必要です。
・日本の中学校卒業程度認定試験では、N1かN2の合格者は、国語の試験が免除されます。
・EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士の候補者選定の条件では、N5程度(インドネシア、フィリピン)またはN3(ベトナム)以上の認定が必要です。


・技能実習生の介護職種では、在留資格の申請前にN4(またはJ-TEST、NAT-TEST)合格が必要です。(厚生労働省は、入国1年後にN3に合格できなくても、さらに2年間の在留を認め、N4のままでも計3年間は滞在できるようにすると緩和を決めました。)


・特定技能では、全業種において、N4合格または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の合格が必要です。




受験料は場所によって変わる?

[日本国内]:全てのレベル一律 5,500円(税込)
[ベトナム]:N1~3 500,000VND(約2,500円)、N4~5 450,000VND(約2,200円)


国内でも、海外で受験する場合でも、試験内容は同じですが、現地の所得水準に合わせて料金設定しているものと思います。



実施主体の独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)とは・・・


外務省が所管する独立行政法人の一つ

世界の全地域において、総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関です。日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむため、「文化」と「言語」と「対話」を通じて日本と世界をつなぐ場をつくり、人々の間に共感や信頼、好意を育んでいきます。

国際交流基金 - 国際交流基金の紹介


「文化」「言語」「対話」の3つをキーワードに事業がされているようです。



言語分野での活動内容を見ていきましょう

日本語教師の育成、海外派遣、日本語教師の役に立つコンテンツを開発、日本語学習者に対しての日本語講座、教材の開発、映画上映会やチャリティ公演、日本語スピーチコンテストなどイベントの開催をしたり、国際交流基金賞、地球市民賞というもの顕彰しています。



2017年の財務諸表を見てみました。

運営には、国からの補助金として約150億(2017年度)が最も大きいようですが、次いで「日本語能力試験受験料等収益」が11億円(2017年度)と目立ちます!



世界24か国・29拠点あります。


ハノイにも拠点があります!


ベトナム日本文化交流センター
住所:No. 27 Quang Trung Street, Hoan Kiem District, Hanoi, Vietnam
電話:84-24-3944-7419




まとめ

日本語能力を測る上で、基準を作ってきたのが日本語能力試験(JLPT)と言えそうです。5つのレベルを設定し、段階的に目標設定できるJLPTの合格を励みに、勉強を頑張った外国人の方は多いのではないでしょうか。


JLPTに合格することで、その後の人生が大きく好転することになるかもしれません。実際に、私の関わってきた多くのベトナム人がチャンスを掴んでいます。独立起業したり、日系企業で社長秘書をしたり、日本とベトナムを頻繁に行き来している人たちがいます。


仕事、社会的地位、お金だけでなく、友人が増え、世界が広がる、人生が豊かになりますね!



以上、最後までお読みいただきありがとうございました。


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