ベトナム送り出し機関で働く日本人のブログ

ベトナム生活で日々感じたことを不定期更新します。ベトナム人材(技能実習生、技術・人文知識・国際業務、特定技能、インターンシップ)についてのご相談を承ります。

ベトナムが新型コロナウィルスの封じ込めに成功した理由

5月7日時点、ベトナムの新型コロナウィルスの感染者


累計は288名(治療中は、55人)


海外からの入国者は131名ほど


死者は0名です。封じ込めに成功した理由を私見を挟んで書いてみました。


①国内で最初の感染者

1月22日湖北省武漢市武昌区からの渡航者、中国人の親子2名が感染、ホーチミン市内の病院に入院していると発表されました。その翌日から、国内の多くの会社が春節の休みに入っています。


ホーチミン市は、ベトナムで最も人口密度の高い地域です。


ホーチミン市4,363人/km2
ハノイ市2,398人/km2


春節で一斉に故郷へ帰省する人たちが、コロナウィルスを持ち帰っていたら、恐らくベトナムでももっと感染が広まっていたのかなと思います。ここで感染爆発しなかったのは、最初の感染者の発見が早く院内でのクラスターを防いだことはもちろんですが、春節入りのタイミングと重なったこと。息子が通う日本人学校では、一足早く1月15日からお休みに入りましたし、都市部の市民の多くが帰省し、春節の間に対策を練る猶予があったのは幸運でした。


②春節~春節明け

海外から感染者が入国し、北中部に広がります。明らかになったのは10名以下ですが、ここでベトナムの対応は非常に早かったように思います。


教育機関は、春節休暇明けから1月30,31日〜2月2日まで休み延長されたことに始まり、一部地域に至っては今月になりやっと再開されることが決定しました。


2月上旬まで
過去14日以内に中国への渡航・滞在歴のある外国人への入国拒否。ウイルス感染を示す症状がなく、健康でも、自宅・居住地域で最大14日間隔離に関する発表。


2月中旬まで
ビンフック省ソンロイ村は、2月13日から20日間の隔離決定。


2月下旬まで
中国、韓国、イタリア、イランからの入国者は、医療申告と医療検疫を義務付けし、隔離措置を取ることが決定。大規模イベントの完全中止(F1ハノイGPは、3月中旬に中止が決定)。香港を含む中国人への観光ビザ発給を制限。中国の感染地域からの労働者への就労許可を拒否。韓国大邱・慶尚北道に過去14日以内に滞在歴のある者は入国中止等々



普段の生活の中で感じたことは、2月中旬にレストランへ入る際には、体温チェックやマスクを配るサービスを受けました。その後は、ショッピングモールやスーパーなどに広がり、マスクが品薄、高騰しました。学生などが減ったことにより、交通渋滞が減り通勤がラクになりました。


日本人を含む公安上の管理強化(外国人の宿泊先・勤務先での居住登録・渡航歴確認等)があり、私は公安に呼び止められたりすることはありませんでしたが、知人の中には自宅待機を言い渡される人も出たりしました。


この様に、早く、強制力のある対策が功を奏し、2月までの感染者は16名でした。


③国民性や慣習

元々、ベトナムでは庶民の足としてバイクを利用しています。ハノイは電車、ホーチミン市は地下鉄を建設中で運行開始前ということも、幸運だったかもしれません。


またバイクに乗る際には、ほとんどの人が布製のマスクをしており、バイクを乗るとき以外でも使います。薬局から不織布のマスクは消えましたが、布マスクの存在は大きいと思います。



平均年齢は、31歳と非常に若く、重症化しやすい高齢者が少ないです。飲食店はGrabバイクを利用しデリバリーでしぶとく営業していたり、勤務先の日本語センターでもオンラインの移行は驚くほどスムーズでした。元々衛生意識は日本とは比べ物にならないくらい低いですが、2月2週目には自宅マンションに手をかざすと噴霧されるアルコール消毒器の設置やエレベーターのボタンにカバーを付きました。


ベトナム政府には、圧倒的な権力が集中している上に、新型コロナでの様々な対応にはリーダーシップがあり、国民は不平不満を言わずに黙って従っているようでした。またFacebookなどには、医療従事者に対する感謝を表明する投稿が多くみられ、一体感がありました。そんな中で倒産が決まった事業者も多いと思いますし、これからも増えるだろうと思います。声を上げられずに泣いている人たちも、今回の政府の対応については、コロナを憎んで人を恨まず、ではないかと思います。


普段はのんびりしている印象のベトナムの方々ですが、有事での行動は早く、柔軟だと感心しました。


④日本語センターの対応

技能実習生を運営する日本語センターでは、春節明けも運営を認められていました。全寮制を取っているため、外部との接触も少ないだろうという理由で、2月下旬までは普通に教えているところもありました。


勤務先では春節明けから、自主的に日本語センターをクロウズし、学生たちは落ち着くまで自宅待機、オンライン授業に切り替えました。この時点では、個人的に、自宅待機やオンライン授業は反対でした。連休中の時間を取り戻し、来日を控え少しでも日本語能力を上げて送り出したいと考えていましたし、入国を待つお客様の顔も浮かんできました。他社との競争にも負けたくないし、怠けてしまう学生が出てしまうことも不安に感じていました。そんな私の訴えも虚しく、「感染が広がったらどうするの?」に返す言葉は有りませんでした。


⑤3月に第二波

3月6日まで新しい感染者は報告されておらず、ベトナムの新型コロナは終息した?と気持ちが緩み始めていた矢先でした。イギリス、イタリア、フランスを周遊したベトナム人の帰国者が入国審査の際に虚偽の申告をしたことにより、ハノイ市内は一気に感染者が増え、3月14日時点で累計49名になりました。


この時点で、4月に初開催予定だったF1ハノイグランプリの中止も決定しました。設営が進んでいた会場の撤去作業を見るのは、とても寂しかったです。


ここから怒涛の新型コロナ対策が実施されました。
・国内の検疫強化
・3月16日マスク着用義務化
・ハノイ市内の一部地区で日本人に対する隔離措置
・3月21日から入国者すべてに対して集団隔離を実施。国内移動の医療申告義務化。
・3月22日から全外国人の入国停止
・ベトナム航空の国際線運航停止(6月末までベトナム〜日本間のフライトは一部運休停止が決まっています。)
・3月28日~4月15日まで商業活動一時休止を決定


技能実習生など来日を予定していた方たちは、予定を前倒しして、高い航空券を購入して、出国したとか、在留日本人が一時帰国したという話しも周りから聞こえてきました。


市内バス、長距離バスの運行が停止しました。タクシーやGrabも停止し、移動の足がない人から相談を受けました(3月末ごろ)


3月末の時点で、感染者の累計は204名(内、55名は治癒)でした。厳しい対策をしてきたものの、新規感染者が何人増えたと連日ニュースで報道され不安になりました。実際には、これらの対策をしてこなければ、もっと多くの感染者が出ていたと思います。


⑥全国規模の社会的隔離

4月1日から15日間、全国規模の社会隔離の実施が決まりました。


営業活動が認められたのは、


・食品を扱うスーパーや雑貨店など含む


・病院、薬局


・ガソリンスタンド


・レストラン(面倒な手続きをすれば、テイクアウトやデリバリーはOKでした。)


勤務先も在宅勤務に変わりましたが、事務所で郵便物を受け取りに行ったり、スーパーへ買い出ししたり普通に外出できました。マンションの外に出てみると、いつもは淀んでいるハノイの空も青空が見える日が多く、クラクションの音や人の声が全然聞こえません。道はがらがらに空いていて、非日常感が半端なかったです。



厳罰化
・公共の場でマスクをしないと最大罰金300,000VND(約1,500円)
・ウイルス感染を隠した者には罰金2,000,000VND(約1万円)
・医療申告を虚偽報告したり、その様な者が他人に感染させた場合など刑法の適用もある。


一方で、2020年4~6月分の電力利用料金が減額、事業者に対して従業員のお給料を一部補助などが決定。


4月16日以降は、感染リスクの高い地域、リスクのある地域、低い地域をグループ分けして、ハノイ市及びダナン市を含む12省市はリスクの高い地域として、社会的隔離措置の延長が決定しました。4月22日ハノイ市の一部地域は、4月30日まで継続とし、徐々に制限を解除してきました。


4月に入ってから、一度だけ薬を買いに病院へ行きました。その病院では、コロナ感染者受入のため、一般の受付はすべて停止していて、駐車場にも入れず、入り口前で系列の病院を案内されました。移動先の病院では、受け付けがとても厳重で、病院でのクラスター防止を徹底していると感じました。


3月怒涛の新型コロナ対策から、全国規模の隔離措置を実施した効果は抜群でした。直近3週間の市中感染による新規感染者は確認されていません。カラオケやクラブ以外の営業は再開が許可され、交通渋滞や大気汚染がセットではありますが、日常が戻ってきました。


ここまでベトナムは、見事に未知のウィルスとの戦いに勝利したと言えます。その理由は、官民一体となり挑んだこと、ウィルス発生の時期や国民性などもプラスに影響したと考えます。今後は、いつ日本など海外の往来規制を緩めるのか、このまま特効薬やワクチンの開発を待つのか、注視していきたいと思います。


以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
vietnam.maru@gmail.com